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高森明勅
2017.1.6 01:00

偶然の首相

安倍晋三氏が再び首相に就任したのは偶然だった。

その経緯を忘れた人も多いのではないか。

今から5年前。

平成24年のこと。

まだ自民党が野党だった頃の党総裁選。

当時、民主党政権は3代目の野田佳彦内閣だった。

消費税引き上げの方針を打ち出して支持率は低迷。

次の衆院選では自民党の政権復帰の可能性が高いと見られていた。
だから、この時の総裁選は次期首相選びに直結する意味を持った。

候補者は5人。

安倍氏の他に石破茂、石原伸晃、林芳正、町村信孝の各氏。

この時、安倍氏は取り立てて有力候補ではなく、
むしろ泡沫候補に過ぎないとも見られていた。

安倍氏の後ろ楯の森喜朗氏は、
再登板に否定的で他派閥の
石原氏を支援。

党内最大勢力で安倍氏の出身派閥の町村派は、
会長の町村氏自身の
出馬で、
安倍氏への支援は期待出来ない状況だった。

ところが、その総裁選の最中に町村氏が脳梗塞で倒れる。

選挙戦は続けたものの、町村氏に投じられるはずの議員票が、
かなり安倍氏に流れた。

また当時、幹事長で有力候補と見られていた石原氏は
福島原発の第1サティアン」発言で批判が集中。

1回戦の党員投票で酷い結果に。

石原氏の自滅の“お蔭で”安倍氏は党員投票で2位に食い込んだ。

しかし、1位の石破氏にはダブルスコアの大差をつけられた。

2回戦の国会議員投票でも、石原氏に次ぐ2位だった。

合計では1位が石破氏の199票、2位が安倍氏の141票。

だが、石破氏も過半数を獲得出来なかったので、
国会議員による決戦投票に雪崩れ込む。

決戦投票では、石破氏が1度離党していた過去が長老やベテラン議員に
嫌われて、
安倍氏の逆転を許した。

もし町村氏が倒れないか、又は石原氏の失言がなければ、
恐らく安倍氏は総裁になっていなかったはずだ。

そうすれば当然、首相への就任もなかった。

安倍氏が、あたかも首相になるべくしてなったかのように、
錯覚している人がいるのではないか。

今の政界には、安倍氏以外に首相に相応しい人物が
まるでいないかのように、
思い違いをしている人も。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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